アーユルヴェーダの食事法 ⑧季節との順応~吸収期と放出期~

月見

アーユルヴェーダでは、一日の理想的な過ごし方(ディナチャルヤ)だけでなく、
「季節の健康法」「季節の食事法」についても細かく記載があります。

前回、四季を意識した食事について少し触れましたが、今日は、季節と私たちの食欲や体力の関係について、
アーユルヴェーダの観点から探ってみましょう。

 

季節との順応(リトゥ・サートミヤ)

アーユルヴェーダの古典にはこうあります。

“その人が季節に順応した食事と健康法を心得ていれば、
食物はその人の体力を増し色つやをよくする”

季節のエネルギー(ドーシャ)を良く知り、その季節にあった食事や生活を行えば、その人は健康になる、
ということです。
当たり前のことのように思えますが、実際にはどうでしょうか?
一年中おなじように過ごし(運動量や睡眠)、おなじような食事(量や質)を摂ってはいないでしょうか。

まずは、アーユルヴェーダが示す、季節の定義についてみてみましょう。

 

季節と一年の区分

アーユルヴェーダでは、1年を6季に区分して考えています。
①シシラ(厳冬)
②ヴァサンタ(春季)
③グリーシュマ(夏季)
この3季を『吸収期=アーダーナ』といいます。

アーダーナとは、本来「受け取る」という意味で、太陽が地上の水分を受け取り吸収する時期だとされ 
冬至から夏至までの半年をさします。

④ヴァルシャー(雨季)
⑤シャラト(秋季)
⑥へーマンタ(初冬)
この3期は『放出期=ヴィサルガ』といいます。

ヴィサルガは「放出する」という意味。太陽が力を手放し弱まるため、地上に水分が満ちる時期だとされています。夏至から冬至までの半年をさします。

 

放出期(ヴィサルガ)と吸収期(アーダーナ)の特徴

月
ふたたび古典(チャラカサンヒター)から言葉を引用してみます。

“放出期は、風がしっとり柔らかくソーマ(月)の力が満ちていて、世界中をその冷たい光線で常に満たします”

“放出期(冬に向けて)は、サウミヤ(月の冷たい性質が優勢な状態)であり、いっぽう吸収期(夏に向けて)は、アグネーヤ(アグニ=火要素が優勢な状態)である”

“太陽と月と風が、時間・季節・味・ドーシャ・体力の変動を起こしている”

つまりアーユルヴェーダでは、
太陽や月や風が作用して、季節を生じさせ、ドーシャ(生命エネルギー)を変動させ、人の体力も変動させる、と説いています。

アーダーナ(吸収期)には、太陽が力を増し、自然界から水分・油分を取り去ります。
夏にかけて、鋭く乾燥した風が自然界を干上がらせ、そして人間の体力も奪うのです。

一方ヴィサルガ(放出期)は、太陽が力を地上に戻し(放出し)ます。
冬にかけて太陽光線の強度は弱められ、月の力が強くなるにしたがい、人間の体力も戻ってくるのです。

 

季節によって体力はどうなる?

天秤
このように放出期と吸収期の周期から、
人間の体力は6月下旬に弱くなり、12月下旬に最強となる、と言われています。

体力に比例して、私たちの食欲も夏に落ち、秋冬にかけて増大していきます。

夏はかき氷などあっさりしたものが欲しくなりますが、
冬は餅のように消化に重いものでもペロッと食べることができますね。

このように、夏の体は省エネモード。
あまり頑張らずじっとしていなさい、という古代の智慧なのでしょう。食欲がおちて当然です。

逆に冬に向かって、体力が戻ってきます。どんどん頑張れる時期になっていくのです。
だから、食べて体力をつけられるように消化力が増し食欲がわきます。
スタミナ

この時期にあまり我慢して食べないでいると、消化の火が自分の体を吸収してしまいワータが乱れる、と古典にはあります。
現代風にいうと、必要以上に「痩せこけてしまう」ということでしょう。

皆さんも経験から知っているように、なんとなく痩せやすい季節や太りやすい季節があります。夏も冬も同じような量・質を食べることは、本来体にとって負担をかけていることになるかもしれません。

夏バテしないように!と、食欲もないのに、スタミナ料理を食べなくてもいいのです。
逆に冬の寒い時期にダイエットや断食は非常にきつく感じるはずです。

現代社会では、夏に休息して冬に頑張る、と季節に応じて仕事量を調整することは難しいでしょう。
でも実際に体はそのようにできているのですから、消化力や体力も変動して当然なのだということを認識しておきましょう。

情報:英国アーユルヴェーダカレッジ

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